サラリーマンをした後、ベンチャー企業の経営に参画。経営者として数社で力を発揮、現在はコンサルタントとして活躍している方です。
著者は、「チームシップ」という言葉を発明し商標も取得しています。
「チームシップ」とは「チーム内の地位や役割に関係なく、メンバーの一人ひとりがお互いを理解しながら、チームとしても成果のために成長すること」と定義しています。
リーダーになると「リーダーシップを発揮しろよ」と言われれますが、これがくせもので、空回りする場合が少なくないとのこと。むしろメンバーのやる気を削ぐと言っています。それは課長がメンバーのそれよりもチームシップの強化に重きを置き、これをサポートするのがリーダーの役割と考えています。よくあるのが上司受けのいい課長。こんな課長にリードされるとメンバーの味方でないと判断されチームは機能しないようです。
リーダーのやるべき仕事とは、「正しい目標設定をすること」「目標達成の具体的方法を示す」「現実を正しくみる」「進捗管理ができる」としています。
しかしチームシップが強化されてくるとチームでリーダーのやるべき仕事ができるようになるので特別なリーダーは必要なくなる。著者はチームを雁の群れに例えていて、雁の群れでは先頭を飛ぶ雁は固定されておらず入れ替わっているとし、チームシップの強化された理想の姿としています。
著者のチームビルディングの手法はTDC(Teamship Discovery Camp)というもののようで、まずチームの目標を設定する。そして現実とのギャップから生まれる課題を見つけて、どうやったら課題が解決するか行動すべきことを話し合い、他人事を自分事にしていく。そして管理者という名の責任者をその行動ごとに決めてメンテする。全員が各々の役割を明確に把握し行動するだそうです。決定するのは「目標」「期限」「成果レベル」のようです。ただし最初に取り組むべきは、この本でもメンバー同士の相互理解のようです。ただ詳しくは触れられていませんでした。また成功体験を積むことについては記述が見当たりませんでした。
TDCに加え、企業文化を明文化したCCS(Corporate Culture Standard)を導入するとさらに効果的とだ述べています。CCSには企業の理念とビジョンそして「その会社の人間はかくあるべき」という人間性を説く部分と「どのように業務を進めるのか」といった仕事のノウハウ的な部分で構成されるのが一般的のようです。
CCSは完璧なものを最初から作ろうとすると、とても大変とのことです。CCSの標準項目は120ぐらいのようで、1日1時間、2日間かけて66%ぐらいを目安に仕上げ、3ヶ月おきに話し合いをして10%ずつ仕上げていって1年でほぼ100%にするのが良いと述べています。
TDCとCCSの適用によって、社員の人数はそのままで数ヶ月で売上が4倍になったという例や、5年後に20倍以上になったという例を出されています。表紙には40倍という数字が出ていますね。
良くある人事で成績の素晴らしい人をリーダーにすることがありますが、他の人はその人を真似出来ないし、その人自身もがんばれば出来て当然と考えていて自分で何とかしろと考える人が多いと述べています。また、その人は自分の力だけを頼ってチームの成績を出そうとするので、結果的にチームであることのメリットが活かせないとのこと。
採用に関して、判断基準はいろいろあると思いますが、著者は企業文化に合った人を選ぶべきだと説いています。スキルは教えることはできるが、価値観やあり方を合わせさせるのは難しいからだそうです。
また、面白いなと思ったのは、採用するなら、「素直な人」よりも「素直でない人」だそうです。「素直な人」は自分で考え創意工夫をあまりしないからだとか。一方「素直でない人」は自分で考え創意工夫をするのはいいが扱いが難しいのが難点ですが、彼が行った行動をちゃんと理解して承認してあげて、何故その行動ではまずいのかをきちんと理解させれば問題が無いと述べていました。